休日出勤なクリスマス

 せっかくのクリスマスだというのに休日出勤とはいかがなものか。納期が近いという理由で仕方なく会社で仕事をこなす私の唯一の救いは、隣に座る先輩のサボと一緒にいるという点だ。

 横顔も素敵ですね。なんてだらしないことを考えていると、彼がふと口を開いた。

「できたのか?」
「んーもう少しです」
「おれもなんとかするからなるべく終わらせよう。お前もこんな日は早く帰りてェだろ?」

 そういうサボの視線はパソコンから離れない。手元のキーボードがカタカタと激しく音を立てる。

 休日の場合は私服での出勤が認められているのだが、サボは普段と変わらずスーツだった。聞けば「私服がほとんどない」らしい。でも私は彼のスーツ姿が好きなので、願ったり叶ったりなのだ。大人の魅力というものがにじみ出ていると思う。いつもより少しだけ緩いネクタイは、余計に色気を感じてどぎまぎしてしまう。

 自分でもどのくらい見つめていたのかわからない。真っ直ぐに画面を見ていたサボが、俄然こちらに顔を向けたので思わず仰け反ってしまった。

「お前さっきから見すぎだ。ちゃんと仕事してんのか?」

 サボが椅子のキャスターを利用してこちらのテリトリーに遠慮なく入ってきた。避ける間もなく体が密着してしまい心臓が跳ねる。なんてことだ。良い匂いがする。

「おい、全然進んでねェぞ!!なにがもう少しだ!!」
「だって、先輩のスーツ、かっこいいから……」
「はァ!?アホか!!くだらねェこと考えてる暇があるならさっさと終わらせろ」

 マウスのクリック音を盛大に鳴らして席を立ったサボは、なぜかそのままオフィスを出て行った。

 しかし、私は見てしまったのである。金髪からのぞく両耳が、ほのかに赤くなっていたことを。