Under the Milky Way


※このお話は『オルレアンの少女よ、旗を振れ!』の番外編という位置づけです。

 7月7日は七夕といって、織姫と彦星が天の川を渡って一年に一度だけ会える夜のことをいう。中国の伝承が元になっていて、出会った二人はすぐ恋に落ちそのまま結婚したのだが、結婚した途端に遊んでばかりで働かなくなったので神様が怒って二人を引き離してしまう。けれど、織姫が泣いて悲しんだので年に一度だけ会うことを許した……という伝説がある。


 校内でも七夕にちなんで笹の葉が昇降口に飾られていた。どうやら自由に願い事を書いて吊るしていいというちょっとしたイベントが行われている。高校にしてはなんだか可愛らしいイベントである。
 かくいうエマも、笹の葉の横に設置された短冊をもらって願い事を考えている最中。ついでに友人三人分ももらってきて、彼らに渡してみたのだが。

 東校舎の屋上へつながる踊り場に四人で地べたに座り込んでいた。エマがどうしようと悩む中、いちばんに「書けた!」と短冊を掲げているのは後輩のルフィ。
 人の願い事を勝手に見るのはよくないと思いつつ、好奇心が勝ってちらりとルフィの短冊を覗きこんだ。

「えっ。それって願い事っていうか、いや願望だからいいのかな、うーん」
「どうした、まだ決まってねェのか?」エースが不思議そうにエマに問いかける。
「ルフィの願い事が願い事じゃないような気がして……」
「あいつの頭ん中は肉のことばっかりだからな」サボもルフィの短冊を見たのか腹を抱えて笑っている。
「他人の願い事なんてどうでもいいだろ」
「……エースってそういうとこあるよね」
「あ? なんか文句あんのか」

 怖い、エース怖い。その目で睨まれると何も言えなくなるからやめてほしい。

「そうやってすぐ喧嘩口調になるなよ」
「そ、そうだよ。エースってばすぐ怒るんだから」サボが援護してくれたので乗っかる。
「サボ、逆におめェはいつもエマを甘やかしすぎだ」
「ありがとうサボ! 優しい! 好き!」
「ははっ、エマは可愛いなァ」
「なんだよお前ら楽しそうだなーおれも混ぜてくれ」

 ついにはルフィまで加わっていつもの賑やかな放課後の風景になる。
 こうした軽い会話もできるようになったのはエマが三人の中に溶け込むことができている証拠だった。

 ――今日のメシが「にく」でありますように。

「でもルフィ、肉くらい漢字で書きなよー」