姫はじめ、する?


※『たしかに恋をしていた』の番外編かつ会話文のみです

「総長そうちょう!」
「なんだ朝っぱらから。うるせェぞ」
「さっき食堂でフレイヤさんに会ったんですけど、なにやら張り切ってたんでどうしたのか聞いたんです。そうしたらなんて答えたと思います?」
「さァな」
「今日は姫はじめの日なので、だそうです」
「姫はじめ? 聞いたことねェ行事だが……」
「おれも知らなくて、そういうのに詳しい奴に聞いたんです。そしたらその年最初の性交を意味するらしいっす」
「……」
「あー! その顔は全然信じてないですね」
フレイヤがそんな不埒なことに張り切るわけねェだろ」
「まあそれにはおれも同感なんですけどね、でもフレイヤさんだって総長のことすげェ好きでしょ? 年末忙しくて一緒にいる時間が少ねェって苛々してたじゃないすか、だからようやく落ち着いた今日こそって彼女が気を遣ってくれた可能性もありますよね」


*


「あ、ちょうどよかった! 炊けたよ」
「……?」
「あれ、部下の人から聞いてない? 姫はじめのこと」
「えっ……!」
「なんでそんな驚いてるの? 昨日はお休みしたから、今日はご飯炊いておかずもたくさん作るって話。ワノ国でよく聞く文化なんだ、姫飯って言ってやわらかいご飯を食べる日」
「あー……なんだそういうことか」
「サボ……?」
「いや、姫はじめは年の最初にお前と交わることだって言ったんだ。フレイヤが苛々してるおれに気を遣ってくれたんじゃねェかと」
「なっ……ちがっ……そう、いう意味じゃ、」
「もちろん手料理は嬉しいよ、全部ちゃんと食う。けど、腹だけじゃなくてほかも満たしてくれるだろ?」
「……っ、ぁ」
フレイヤが足りねェんだ、頼むよ」
「……う、うん」