骨付き肉

 フレイヤに作れない料理はないんじゃないかと思うときがあるが、今回の件は本当に驚いた。獣を仕留めたわけでもないのに骨付き肉を作るとは。彼女の腕は日々上達していると思う。
「こんな大きなお肉、絵本でしか見たことない! まさか本当に作っちゃうなんてフレイヤちゃんすごーい」
「ねえねえどうやってつくったの〜?」
 子どもたちがフレイヤを囲んで、テーブルの上に置かれた骨付き肉を見つめている。その目はキラキラと輝き、初めて見た物に対する好奇心が抑えられないといった表情だ。
 クリスマスが近づいてきた冬のある日。そのクリスマス料理として海賊が食べる大きな骨付き肉を作ってほしいと頼まれたフレイヤは、今日の夕方から練習していたという。その試食会に仕事を終えた自分も呼ばれたわけだが。
「ふふ、鶏肉と牛肉の両方を使ってるんだよ。せっかくだからフォークとナイフは使わずに食べてね」
 そう言って子ども一人ひとりに骨付き肉が乗った皿を渡していく。嬉しそうに受け取る姿は宝を前にした海賊とまるで同じだ。
「サボもどうぞ」
「……ああ」
 レタスが敷かれた大判皿に、つやつや光るソースがたっぷりかけられた骨付き肉が乗っていた。香ばしい匂いが鼻をかすめ、途端に口の中が唾液であふれてくる。サボはその肉にゆっくり手を伸ばした。そして肉の両側に突き出た骨を掴んで、歯で肉をむしり取るようにかじりつく。
 刹那、コルボ山でエースとルフィの三人でバカデカい生き物を仕留めた記憶がよみがえった。丸焼きにして笑い合いながら食ったあの日々が――
「んっ……、……ッ! フレイヤっ、これ、」
「うっま〜〜〜!」
フレイヤっ! なにこれ、すっごくおいしい!」
「こんな肉、生まれてはじめてだ……!」
 サボの言葉を遮るように、テーブルの向こうで感嘆の声が次々にあがる。子どもたちがぴょんぴょん跳ねながら美味しいおいしいと連呼するのを聞きながら、フレイヤも嬉しそうに笑った。
「サボはどう? 美味しい?」
「ん、美味いよ。驚いた、お前こんなモンまで作れるのか」
「前にレシピを見たことがあって、それをちょっとアレンジしたの」
「ただのカフェ店員にしておくにはもったいねェが、お前の料理の腕が世の中に知れ渡るのも困るんだよなァ」
「……なんの話?」
「いや、こっちの話だ」
 上手く誤魔化して、サボは滴り落ちてくる肉汁とソースが良い具合に絡まった、濃厚な旨味を堪能した。

2025.12.11 たし恋