ふたりきりの二次会
居酒屋を出ると、数人の輪がいくつかできていた。二次会どうしよ〜なんて会話が聞こえる。
冷たい夜風が吹きつける。ビール一杯とハイボール一杯しか飲んでいないのに足元がふわふわしている気がして、風がやけに心地よく感じた。
「ねえ、ミョウジさんも二次会行こうよ」
ふうっと右手で扇いでいたとき、後ろから誰かに肩を掴まれた。振り返った先に三つ上の先輩が二人立っていて、ほのかに赤らんだ顔で私に迫ってくる。これは完全に酔っている。
二次会は行くかどうか悩んでいたところだったのだが、この先輩たちに絡まれるくらいなら行きたくないというのが正直な気持ちだった。
「えっと……明日早いので、やめておこうかと」
「大丈夫大丈夫。一時間くらいで帰っていいから」
先輩の一人が私の肩に腕を回して「いいよね?」と顔を近づけてきた。とっさに顔を背けて離れようとしたが、私自身も酔っているのか力があまり入らない。けれど、これって立派なセクハラじゃない? ほかの人は会話に夢中で気づいていないようだし、早く会計が終わってと祈るように目をつぶった。
「先輩。彼女は酔ってるみたいなのでおれが送ります」
「あ、おいサボ!」
突然現れた後輩のサボくんが間に入って、先輩の腕を振り払ってくれた。それどころか、行きましょうとそのまま二次会組とは逆方向へ歩き出したので私は大人しく彼についていくことにした。
駅に向かっている途中、気持ち悪くなってガードレールに腰を下ろした私を見かねたサボくんが、コンビニで水を買ってきてくれた。冷たい液体が喉を通っていく感覚が気持ちいい。
「ん、サボくんってやさしいんだね……」
「……誰にでも優しいわけじゃないです。それより、だいぶ酔ってますね」
「酔ってないよ」
「酔ってる人ほどそう言うんですよ」
苦笑するサボくんが隣に座ってきた。長い足を持て余すように歩道へ投げ出している。
彼の言う通り本当は酔っているが、後輩の彼といるのはなぜか心地よくて、もっと喋っていたいと思った。
「サボくんともう少し喋りたいな……ふたりでもう一軒いっちゃおうか」
「……」
「嫌だったら、」
「嫌じゃないですけど……今の発言を酔って覚えてねェのは困るな」
後半を独り言のように呟くと、サボくんは私の手を掴んでそのまま夜の街中へ繰り出していく。
2025.12.13 現パロ 後輩サボくん