意趣返し
みかん食ってる。
その発言から十五分ほど経っただろうか。洗い物を終えたフレイヤが居間を覗くと、こたつに突っ伏しているサボを発見した。食べ終えてから間もなく寝落ちしたらしい。こたつの魔力はすごいとよく聞くけれど、確かにそんな強い力を秘めている気がする。
フレイヤはサボに近づいてよく観察した。頬にみかんの皮をくっつけているだけでなく、口が少し開いている。それだけでも十分にかわいさを発揮しているが、ふと自分も悪戯したくなってフレイヤは彼の頬に手を伸ばした。いつもは悪戯される側なので、ここぞとばかりに手が動く。たまにはいいよね……?
くっついている皮を少し動かして口元まで移動させたフレイヤは、髭らしくなるよう調整する。我ながら結構いい感じ。
「ふふ、かわいい……」
しばらく見ているだけだったが、このまま崩れてしまうのが惜しくなってフレイヤはこっそり写真に収めることにした。エプロンのポケットに入れていたスマホを取り出してカメラを起動し、画面にサボを収めていい角度を探してから、パシャリ――
直後、音に反応したのか被写体が突然動き出した。驚いたフレイヤは慌てて身を引いたが、相手のほうが数秒早くこちらの腕を掴んでじっと見てくる。
「今、おれで遊んでたよな?」
とても寝起きとは思えないほど、はっきりした口調でサボが迫ってきた。
「あ、その……これは、」
「悪い子だなフレイヤは」
次の瞬間、掴まれていた手を引っ張られたフレイヤはあっという間にこたつの中へ引きずり込まれた。加えて、サボの足がものすごい速さでフレイヤの両足首を挟み、そのまま強い力で引き寄せたので、完全に拘束されてしまった。
「離してっ……」
「おれが満足するまで離すつもりはない」
足だけでなく体もぴったりくっついていて身動きがとれない上に、器用に足の指まで絡めてきたので逃げられなくなった。サボの意地悪な笑みを見た瞬間、何かを期待するようにお腹の底がきゅんと疼いた。
「これで動けねェな。おれで遊んだ分、きっちり返してもらうぞ」
2025.12.17 たし恋