独り占めしたい夜

 エースも来るからクリスマスパーティーに参加してほしいとアカリに頼まれたはいいが、肝心のエースがバスケ部の練習で行けないと前日になって言われて正直行く気は失せていた。けど、エースが「あいつのこと狙ってんのは同学年にもいるだろ」と言われてしまえば頷くしかない。
 サボは幼なじみである彼女が小さい頃から好きだ。その想いはエースにだって負けない。本人だけがのほほんと、自分とエース、そしてルフィといるのが楽しいと公言しているので口に出したことはないが。
 クリスマスソングを歌いつつ、ケーキやチキンを囲う中、ひとり気を配ってせっせとドリンクバーと部屋を行ったり来たりする彼女を目で追っていたサボは、彼女が席を立ったタイミングで自分もトイレへ行くふりをして部屋を出た。
アカリ
 複数のグラスにそれぞれの欲しいドリンクを注いでいる彼女に声をかける。振り返った彼女は目を丸くさせてから、すぐにしゅんとした顔になった。
「サボ……ごめんね、エースが来られなくなってつまんないよね」
「練習があるなら仕方ねェだろ。お前が気にすることない」確かにエースはいないが、ほかにも友人はいる。
「そっか」
「それよりもさっきからお前だけパシリみてェなことをしてるほうが気になる」
「だって私も幹事だし、エースとサボも呼ぶって約束しちゃったのは私だから」
「……」
 なんだそういうことか。
 おかしいと思っていた。同じクラスでもないアカリから皆でクリスマスパーティーをやるから参加してほしいなんて、一体どういうことなのかと。きっとほかの女子に頼まれたのだろう。幼なじみの彼女が言えば来ると思われたのだ。頼んできた側には呆れるが、下心があるとわかっていて応じたアカリにも腹が立つ。
「何いいように使われてんだ。そんな頼みは断れ」
「でも! サボもエースも女子に人気だし……」
「なら聞くけど、おれやエースが誰かと付き合ってお前より仲良くしてもいいのか?」
 責めたいわけではない。ただ、好きな女からほかの女をすすめられた事実は思いのほか傷ついた。こっちの気も知らないで安請け合いするとは。
「それはその……嫌、かも」
「じゃあいいじゃねェか。荷物取ってくるから入口で待ってろ。そのグラスはほかの奴に持っていかせればいい」
 アカリを受付に行くよう促し、サボは同級生たちがいる部屋へ戻った。近くにいた奴に「アカリが気分悪いから送ってく」と適当に嘘を吐いて、自分も急いで彼女の元に向かう。
 エースには悪いが、彼女にわからせなければ。自分を安売りした罰として、今日は彼女に嫌というほどこちらの気持ちを叩き込んでやろう。サボの頭は、彼女を独り占めすることだけでいっぱいだった。

2025.12.24 現パロ