ゆるやかに落ちていく(3)
練習のない日曜日というのは比較的珍しい。飛葉中サッカー部が創立されてからほぼ毎日のようにサッカーと関わっている。しかし、本業は中学生であるのでもちろんテスト一週間前に入れば練習が盛んなサッカー部といえど部活動が停止になる。
かくして飛葉中サッカー部のメンバー、椎名翼を筆頭とする六人は翼の家に集まって絶賛テスト勉強中であった。ただし、リビングにある大画面のテレビには録画していた日本と強豪ブラジルの国際試合が流れている。すでにオンタイムで観ているはずの彼らは、それでも飽きもせず食い入るように観ている。いや、勉強しなよ。
「、この問題集の答えどこ?」
畑兄弟の兄にある五助がローテーブルに散乱する教科書、参考書、問題集、ノートの山から目的のものが探せずに助けを求めてきた。真面目に勉強しているのはとマサキ、時々翼。まあ翼はもともと頭が良いので問題ないだろうが。畑兄弟と直樹に至ってはむしろたちより勉強するべきだ。
「直樹がふんでる。あんたたち、さっきから全然進んでないけど大丈夫なわけ?」
「おお、まあなんとかなるやろ」
「まさかカンニングするつもりじゃ……」
「お前は俺らをなんだと思ってんだ」
五助も直樹もより成績が悪いし、これまでの素行もよろしくないため下山から目をつけられている。翼が転校してきたことでだいぶ変わったのだが、何せ強面な態度であるから周りの人間もびくびくしがちだ。おまけに各々の我が強いせいで喧嘩も多い。
そんな彼らをまとめるのがキャプテンの椎名翼である。彼はいま一人涼しい顔で黙々とペンを走らせていた。この可愛い顔も黙っていればの話であり、いざ口を開こうものなら蛇口のように次から次へと言葉が流れてくる。そうして幻滅していく女子はこれまでに何人いたのだろう。自分も含めて可哀想になってくるが、がほかの女子と違うのは諦めが悪い性格をしていることだった。
「ねえ翼。アイス食べようよ」
「冷蔵庫にあるだろ、勝手に食えば」
「ねえ翼。この問題わからないから教えて」
「いま、こっちやってんの。見てわからない?」
「ねえ翼」
「うるさいな」
「好き」
「……だから諦めなって」