最深部からアイラブユー

 何が悲しくて幼なじみとこんな場所に二人きりにならなければいけないのか。いや、そりゃあちょっとラッキーかもとは思ったけど。由仁は天を仰いで嘆いてみせたが、天は真っ青な空――ではなく無機質などこかの天井である。
 事の始まりは三十分ほど前。
 サッカー部の練習で土日も学校へ行くことになっている由仁は朝早くに家を出た。マネージャーとして一応飛葉中サッカー部に籍を置いているので、行かないわけにはいかないのだ。しかも準備の関係で選手たちより少し早めに来ている由仁は土曜の静かな朝、すでにグラウンドで整備中である。  その数分後にキャプテン兼幼なじみの椎名翼がやってきて、練習メニューの打ち合わせをこのあと来る監督の西園寺玲と三人でするために部室に二人で入った――つもりだった。
 しかし、そこはいつもの知っている部室ではなく見たことのない真っ白い部屋だった。え、と思った瞬間にはすでに扉も閉まっていてさらには出られなくなった。もはや怪奇現象である。
翼がなんとかこじ開けようと扉に向かっていろいろ試してみてはいるものの、先ほどから手ごたえが まったくないようで「なんだよこれ」と文句をぶつぶつ言っている。そんな彼を横目に由仁は早々諦めて、この部屋で唯一の家具であるテーブルに狙いを定めた。そう、改めて部屋を見回してみるとここには窓もなければ時計や椅子もない。ぽつんと木製の円卓があるだけなのだ。
 翼が扉を格闘している間、由仁はテーブルへと近づきその上に一通の手紙が置かれていることに気づいた。不審に思いつつも、丁寧に折りたたまれたそれをおっかなびっくり開いてみる。そうして手紙の内容を確認した途端、見なかったことにしたい気持ちに激しく駆られた由仁は手紙をそっと閉じて眉間にしわを寄せた。卓上に戻して手紙を睨みつける。

「これは噂に聞いてた例のあれなの……? けど、なんで私と翼が――」
「なに一人で騒いでるんだよ」

 いつの間にか入口からテーブルに移動してきたらしい翼がにょきっと由仁とテーブルの間に突然姿を現したので、上ずった声が出てしまった。まあ翼とはさほど身長差がないのだが(少し彼のほうが高い)。
 卓上の紙の存在に気づいた翼は怪しいものでも見るようにそっと中をのぞきこんだ。短く書かれたその内容を見た途端、やはり信じられないといった感じで目を見開いている。頭脳も容姿も他人より秀でて物事には動じないクールな翼だが、時折周りが見えなくなったり、むきになったりと年相応な一面を見せるので彼は完璧な人間ではない。幼なじみとしては、出来すぎる人間が傍にいるとやりづらいことはあったものの、彼のサバサバした性格から発破をかけられて助けられたこともあるので何とも言えない。

「冗談だと思うだろうけど、それが冗談じゃないんだよねえ」
「……俺は、非科学的なことは信じないんだけど」
「翼、××しないと出られない部屋って知ってる?」
「……」

 途端に麗しい顔が歪んで「こいつは何を言っているんだ」という目が由仁を襲う。自分でもそれは承知の上なのだが、なにせ今実際に起きていることなので否定しようにもできないのだ。翼も同じで表情には思いきり出ていても、目の前の現実を受け入れようと彼の賢い脳が必死に動いているに違いない。
 ××しないと出られない部屋の噂は、クラスの女子が一時期騒いでいたので由仁も覚えている。突然どこかの部屋に誰かと閉じ込められるという不思議現象がごくまれに起こるらしい、と。しかもそれが好きな人とならラブイベントになるとかならないとか。こうした噂話には尾ひれがつくものだが、ラブイベントだなんて名前からして頭お花畑の人間が考えたものだと思われた。とはいっても、由仁も思春期真っ盛りの女子なのでそういうのにまったく興味がないといえば嘘になるのだが。
 いまだに手紙と睨めっこする翼をちらりと見やってどうしたものかと悩む。

「つまり、この部屋から出るにはここに書かれた"相手の好きなところを言う"っていう指示に従わないといけないわけか」
「まあそういうことになるね」

 そう、由仁と翼に課されたお題は"相手の好きなところを言わなければ出られない"である。噂に聞いていたもっと難易度の高いお題に比べたら確実にシンプルで簡単なほうである。しかし、場合によってはこれさえも高難易度である人間がいることを忘れてはならない。

「ふうん……」
「え、それだけ? もっと何かないの?」
「別に。こんなもの、さっさと終わらせればいいだけだろ」

 さもなんてことないみたいに平然と言ってのけた翼はこのまま由仁に対して何を言うつもりなのか。口を開こうとした彼の口を慌てて塞ぎ、
「わあーちょ、待った! ストップストップ!」その事態を未然に防いだ。心の準備もしていないのにいきなりなんて恥ずかしすぎる。
 こちらの想いも知らない翼は喋ることを妨げられたことが不満らしく、ただでさえ不機嫌だったのがさらに眉間のしわが深くなった。麗しい顔つきの人間は不機嫌でもどこか美しさを残すものなのだと場違いなことを思いつつ、「今のは体が勝手に動いたっていうか……」言い訳にもならない謎の言い訳をして取り繕う。

「お前、部屋出る気あるの?」
「あります」
「だったら――」
「でもさ! 相手の好きなところを直接言うとか、ハードル高すぎない?」
「今さら俺たちの間に恥ずかしがるような要素があると思う?」

 どうやら翼の中では恥ずかしがっている由仁のほうがおかしいという言い分だった。いや、むしろ翼は何でそんな普通なわけ? 私たち、ただの幼なじみであって別にそういう関係じゃないよね。と、由仁は抗議したい言葉を必死で飲み込み、どう切り返すべきか考える。
 翼に対して好意を持っていなければ、逆にすんなりと口にできていたであろうことはわかる。もちろん好意というのは恋愛的な意味で、の話だ。幼なじみであり、小さい頃から近くにいた彼を異性として意識したのはいつだったか。幼い頃の淡い記憶が次々によみがえってくる。


 由仁が七歳のとき、隣に引っ越してきた家族がいた。苗字は椎名といい、どうやら由仁と同い年の息子がいるとのことですっかり会うのが楽しみになってその日を心待ちにしていた。どんな子だろうとか仲良くなれたらいいなとか七歳の由仁はただそれだけで、この出会いが何年先にも及ぶ人生の分岐点になろうとは思ってもみないのである。
 椎名家が由仁の元を訪れたのは彼らが引っ越してから一週間が経った頃だった。荷物の片づけなどが一段落したということで、やっと対面できるわけである。  しかし彼らが高原家の敷地内に入って早々由仁の希望は打ち砕かれることになる。椎名家の息子と聞いていた"翼"という子は翼くんではなく翼ちゃんだったのだ。別に性別などどっちでもよかったのだが、男の子の幼なじみがいなかった由仁にとって初めて小学校の外で繋がる男の子だと思って密かに期待していただけに若干のショックを覚えた(母に聞いたら小学校は以前通っていたところにそのまま通うのだそうだ)。
 玄関で母と一緒に出迎え、翼の姿を認めた途端、だから由仁は「えっ、女の子なの!?」と思いっきり叫んでしまったのである。もちろんそれは由仁の勘違いであり、しばらく翼の機嫌が直らず大変な思いをしたことも記憶にあって、振り返ればあのときは苦労したなあと思う。
 何度謝っても不貞腐れて無視される始末。息子のそんな姿に翼の母は困ったように笑ってごめんねと由仁に言うと、耳打ちで「よく女の子に間違われるから」なんて付加情報も一緒に教えてくれた。なるほど、それは怒るのも無理ない。だったら尚更、由仁は自分の気持ちを正直に伝えなければ。これから仲良くなるんだから、嘘はダメだ。

「ごめんなさい。翼くんが由仁よりきれいだったからそう思ったの」
「……」

 そう、なんてったって彼の顔が生物学上"女"である由仁よりも可愛くて綺麗なのだ。だから脳で勝手に目の前の人間は女の子と認識されてしまった。世の中には綺麗な男の子だっているということを、小学一年生の由仁は知らなかったのである。
 なかなか機嫌の直らない翼に由仁はどうすればいいのかあたふたしていると、彼の座っているすぐ横にボールが置いてあることに気づく。これは授業でやったことあるから知ってる。サッカーボールだ。

「翼くん、もしかしてサッカーやるの?」

 サッカーという単語を口にした途端、それまで無視を決め込んでいた翼がぴくりと反応を示した。由仁は引かずに続ける。「私に教えてほしい」
 シンプルかつ短い言葉は、けれど翼の心の扉を開くのに十分だった。
 こうして翼の機嫌を半ば強制的に取った由仁は、その日から彼にサッカーを教えてもらうことになった。学校がある日は放課後の公園で二時間ほど、休日は昼から夕方まで。特に予定がなければ由仁は翼と一緒にいることが増えていき、次第にサッカーの面白さにも気づいていく。
 時々、翼が所属するクラブチームの練習の見学にも行った。小柄な彼はがむしゃらにひたすら大きい相手に食らついてボールを奪うものだから怪我が絶えず、由仁はつまり翼の救急箱的な役割でそこにいたのだ。
 サッカーをする翼はどちらかというと、可愛いよりはかっこいいし、普段とは別人みたいで胸のあたりがドキドキする。学校で女子たちが「○○くんはかっこいい」とか「好きな人と喋った」とかひそひそ盛り上がっているのを由仁は聞いているだけだったが、最近なんとなくわかる気もして落ち着かない。
 私は翼が好きなのだろうか。自分に問いかけてみても、小学校低学年の由仁には答えがはっきりしなかった。確かに好きだけれど、「好き」の種類が友達に抱くそれと変わらないのだ。ドキドキするのはきっと、いつもと違う翼だからだと思いたい。


「……って思ってたんだけどなあ」
「なに一人でぶつぶつ言ってるわけ? 早くしないと練習始まるだろ」
「わ、わかってるよ。心の準備ってものがあるの」
「お前の心の事情なんか知らないよ、早くしなって」

 思い出に耽っている間に、現実の翼も機嫌が悪くなって急かしてくるので由仁は「まってまって」と焦るばかりだった。改めて好きなところを聞かれても、なんて答えていいのかわからないのだ。気づけば好きになっていて、気づけば八年も経っている。常に一緒にいたから好きになるのは時間の問題だったかもしれないが、でもそういえばきっかけは確か――
 再び、由仁の脳内で思い出が再生され始める。


 サッカーを教えてもらうようになってから三年ほど経った頃。いつものように近くの公園で待ち合わせをしていた由仁は、学校が終わるとすぐにその場所へ向かった。今日は新しい技術を教えてもらう予定になっている。楽しみだな。なんてそんなことを考えながら公園までの道を早歩きする。  由仁の通う学校から公園までは数分とかからないはずだが、今日はなぜか翼のほうが早くついていた。どうやら午前で下校だったようで一度家に帰ったらしい。学校が別々だとお互いのそうした事情はわからないのでたまに困る。とはいえ、翼が由仁の学校が終わる時間帯に合わせて家を出てくれたおかげで待ち時間が少なく練習が始められる。
 初めて翼と出会った日がサッカーを始めた日である由仁は、この三年間である程度ボールが扱えるようになっていた。だから次のステップへ進むと、言われて始めたのが敵・味方を想定したトレーニングだった。本格的な説明を始めた翼に、けれど由仁は苦笑いする。正直にいえば、由仁は別にサッカー選手を目指しているわけではない。新しい技術というからアニメで見るようなスーパーシュートとかそういうのを想像していからちょっと拍子抜けしたものの、翼の真剣な眼差しに由仁は黙って話を聞くことに徹した。
 こうして二人が仲睦まじくサッカーをして、いつものように日が落ちようとしていた。しかし今日は滅多に現れない招かれざる客が由仁たちを出迎えるのだった。

「お前らそこどけよ。今から俺たちが使うんだ」

 突然やってきて横暴なことを言うのは体格からして上級生だと思われる五人の集団だった。図体も大きければ態度も大きい男子である。
 無視するわけにもいかず、練習を中断せざるを得なくなった二人はひと際大きいリーダー格の男子の前に立って無理であることを主張した。

「僕たちが先にいたんだ。もう少しで帰るから待ってくれない?」
「聞こえなかったのか? どけって言ってるんだよ」
「……」

 いるいる、こういう上級生。弱い立場の人間が相手だからって上からものを言ってくるんだよね。
 しかしここで引くような弱い人間ではないのが翼である。小柄で可愛らしい見た目からなめられることも多い彼は、強気な態度でその場を離れなかった。由仁はびくびくしながらも同じように上級生と対峙する。
 翼のその目が気に食わなかったのか、男子たちは眉間にしわを寄せた。

「小さいくせに生意気なんだよっ」

 リーダーの男子がかぶりを振って翼に殴りかかろうとしているのが見えたとき、なんでかわからないけど由仁は彼の前に立って庇った。怖いのに、体が勝手に動いていた。このときはまだ由仁のほうが大きかったからかもしれない。そうしなければいけないと頭が信号を発していた。
 ばちんっ。周りに誰もいないせいか、その音は公園内によく響いた。頬を叩かれたのだと気づいたのは、じんわりとそこが熱を持ち始めたからだった。
 思ったより痛いなあ。頬をすりながら小さく呟いたあと、突然男子たちの叫び声が聞こえて辺りが騒がしくなった。えっ。驚いて顔を上げた由仁は目に入った光景にぎょっとする。小さな翼が男子たち相手に喧嘩を吹っかけているではないか。

「あっ、ちょ……つばさく――」
「お前らふざけんなよっ!」

 由仁が声をかけるも、翼は我を忘れて相手に掴みかかっていた。大柄な男子たちの前の翼はさながらライオンに立ち向かうラーテルを思わせる。おまけに頭に血が上っているのか、こちらの制止の声が届いていない。けれど、目の前で喧嘩を繰り広げる翼から思わぬ言葉が聞こえた。

「由仁に何かあったら許さない」

 そのあとの由仁は呆然と事の成り行きを見つめるだけで結局何もできなかったが、偶然にも翼の家に向かう途中だった玲ちゃんが仲裁に入ってくれたおかげで事なきを得た。
 あいつら絶対に許さない。僕が小さいからってバカにしやがって。由仁のことも傷つけた。とか、帰る道すがら翼はぶつぶつ言っていたが、由仁はぼうっとしたまま先ほどの言葉を反芻していた。翼があんなふうに怒ってるところを見るのは初めてで、しかもその理由が私が怪我したからで。
 ぶわっと急に顔に熱が集まってくる。嘘でしょ……。まさか私、翼くんのこと――


 自分より小柄な翼が必死に盾になってくれた小さな背中を由仁は昨日のことのように思い出すことができる。可愛いふりして中身はかなり血の気が多い男の子なのだとそのとき気づいたんだっけ。上級生相手に噛みつくなんて驚いたけど、案外リーダーシップがあるのはクラブチームでの活躍を見てわかっていたから人は見た目で判断してはいけない。
 こうして頼もしい背中を追いかけてもう九年目になるし、この人が好きだと自覚してからは五年が経つ。同い年の女子の中で一番近くにいる身としては、だからこれはチャンスなのかもしれなかった。幼なじみから一歩抜け出すための。
 モテるくせに彼女はいたことないし(由仁が知る限り)、噂では玲ちゃんが初恋で未だに引きずっているとかなんとか(こっちは直樹情報)。玲ちゃんが相手なら由仁に勝ち目はないが、少なくとも同年代でいえば自分はかなり良い位置にいると思っている。
 謎の空間に閉じ込められてからもうすぐ一時間が経とうとしていた。しかし時間が経とうとも現状は相変わらずでじわじわ不安ばかりが募っていく。
 そして再び意識を過去へ飛ばしていた由仁に、翼は呆れてお得意のマシンガントークでもって文句を言ってくるのだった。思い出の中の翼はかっこよかったのに、と悪態をつく。

「話聞いてる?」
「え、あ、うん。聞いてる」
「なら早くしなって。それともなに? 言えない理由でもあるわけ?」

 ぐいっと翼の顔が近づいてくる。由仁としては、あるといえばあるので言いたくないのだがその理由を説明してしまえば翼に好きと伝えることになるので何としてでもそれは回避したいところである。
 そもそも翼がどうしてそんなノリノリなのかが不思議で仕方ない。早く練習したいってだけで割り切れるなら、由仁への想いはたかが知れているのだろうか。

「じゃあ俺から先に言ってもいいけど」
「待って、それは無理。私が先に言う!」
「なんだよ、なら早くしろって言ってるだろ。まさかこれだけ一緒にいて好きなところがないとか言うんじゃないよね」
「んなっ……そんなわけないでしょ!? 私がいつから翼のこと好きだと思って――あっ……」
「ふうん。俺のこと好きなんだ」
「……言わせたでしょ」
「さあね」

 舌を出して、してやったりみたいな憎たらしい顔をする。もうムードも何もあったものじゃない。チャンスとはいえ、こんなつい口から出てしまったところを聞かれるなんて。もう少し言い方と雰囲気があってもよかったのに。人生初の告白は何もない真っ白な空間の中で半ば強制的に言わされた挙句、中途半端な形になった。
 こうなったらもうどうとでもなれ。

「はいはい、そうですね。どうせ好きなのは私だけなんでしょ。普段は冷静なのにサッカーのことになったら途端に熱くなるところとか、ディフェンスの要として指揮を執ってる姿がかっこいいとか思ってるのは私だけってことですね!」
「……なんでキレてんの。誰もそんなこと言ってないだろ」

 心外だとでもいうように不機嫌になる。まるでこちらが悪いみたいな顔をして平然としている姿は彼の賢さゆえの余裕にみえて余計嫌になる。自分だけが熱くなってバカみたいだ。
 翼は仕方ないなと言って由仁の腕を掴むと軽く引き寄せた。昔は由仁のほうが高かった身長も、今は翼のほうが若干高い。

「なら言ってやろうか。俺はお前が好きになる前から好きだったよ、何せ一目惚れだったからね。なのにお前ときたら見た目で女だとぬかすし、ムカついたなあれは。まあでも必死で機嫌を取ろうとする姿は可愛かったよ、泣きそうになりながらどうしようって顔は結構クるね。まさかサッカーに食いつくとは思ってなかったけど、俺としては結果オーライかな」
「あ、あああの、ちょ、ストップ……何が起きてるのかさっぱりなんだけど」

 唐突に何を言うのかと思えば、かなりの爆弾を投下してきた。というか、私より先って一目惚れって翼らしくない! 信じられない。どうなってるの。
 パニックを起こしてあたふたする由仁に、翼はぷっと吹き出して笑ったかと思うと続けて言った。

「わかっただろ? つまりそういうことなんだよ」

 言って、あの得意の笑みをこぼした彼はいつの間にか開いていたドアから外へ出ていくのだった。最後の最後まで結局翼のペースに狂わされた由仁は、改めて自分が告白されたことに気づくと顔から火が出る思いで叫びながら彼のあとに続くのだった。