同じ体温で同じ朝を迎えられるように

 朝ごはんの支度中、視界に入った時計を見て「あれ?」と首をかしげる。陣平が起きてこない。今日は日勤のはずなので、そろそろ起きないと遅刻になってしまう。火をいったん止めて、私は寝室に向かった。
 同棲することに決めてから買ったベッドは大人二人が十分に寝られる大きさだったが、陣平はなぜか縁ギリギリのところで寝ていた。よく見れば、彼の携帯がナイトテーブルのそばに落ちている。なるほど、アラームを止めるために手を伸ばした結果がこれか。
 枕に頬をくっつけて爆睡中の彼に近づき、寝顔を盗み見る。普段はチンピラよろしく目つきの悪い彼だが、今は表情がやわらかい。可愛いところもあるんだよなぁ。知らずに浮かべていた笑いを引きしめて、彼の耳元にそっと口を寄せる。

「じんぺ〜そろそろ起きないと遅刻するんじゃないの」
「……あと五分」

 一瞬だけ片目を開いたものの、また閉じて寝ようとする。仕事モードの自信に満ち溢れた雰囲気にはほど遠い、どちらかと言えば甘えたモードだ。器用に爆弾解体して東都を守っている男が朝は弱いなんて、きっと世界で私しか知らない。その事実にニンマリしつつ、「おーい。本当に遅刻しちゃうぞ〜」と揺り起こす。しかし起きる気配がない。それどころかしっかり寝息をたてている。
 たしか陣平の携帯のアラームはスヌーズ機能を設定してなかったっけ。ったくもー世話が焼けるんだから――と、愚痴をこぼしつつ内心この可愛さにきゅんとして、頬をつついてからかってみる。

「そんな無防備にしてると襲っちゃうよ〜なーんて――ぎゃっ!」

 唐突に腕を引っ張られた直後、視界が逆転して背中からベッドに沈んだ。驚く間もなく、しっかり目を開けた陣平に見下ろされている。ニッと口角を上げて、意地の悪い笑みを浮かべる姿は寝ぼけている様子ではない。

「いい度胸じゃねーか。やれるもんならやってみろってんだ。受けて立つぜ」
「ちょ……っと待ったーー! 遅刻する、ダメ!」
「あ? お前から仕掛けてきたんだろーが」
「いやいやそんなの起こすための冗談に決まってるでしょう。って服をめくるな!」
「細けぇことはいいんだよ、ヤラせろ」
「なにそれ、市民を守る警察官にあるまじき発言。……ッ、ちょ、ぁ」
「うるせー」

 有無を言わせない陣平の手がせっかく着替えたブラウスのボタンを外しにかかった。反対の手で私の両手首を拘束しつつ、片手でも十分にボタンを外せるその無駄のない指の動きが今は憎らしい。もう半分以上のボタンが外れて、胸元が見えてしまっている。
 悔しまぎれに陣平を睨めば、くつくつ可笑しそうにする彼と目が合った。

「いいこと教えてやるよ。今日は午後からなんだわ。昨日のうちに書類を片づけといて正解だったぜ」

 脇腹に手をかけられ、「ひぁっ」と短い悲鳴を上げた直後、逃がさないとばかりに唇を塞がれた。