と過ごす時間は一日の疲れを癒すためにある。だから寝たほうがいいとか、帰ろうかとか気を遣う必要はどこにもなくて、むしろ彼女に構わなければ一日が終われないのだと、そう正直に伝えたら今度は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
あれはが本部に来てから間もない頃だったか、慣れない場所だからとそれらしい理由をつけて彼女の部屋へ行ったり、こっちに呼びつけたり。今でこそ部屋の行き来は夜の時間帯だけとなったが、当初は暇を見つけてはそんなことをしてコアラやハックに諌められたものだ。
今日も同じように膨大な情報と報告書の確認、作戦会議を終えたサボは自室に戻ってシャワーを済ませたあと、ソファで読書するの隣に腰かけた。サボの存在に気づいた彼女は本から目線をはずして、その瞳に自分を映してくれる。
「また料理本か」
「うん。新しいメニューの参考にしたくて」
「最初に食わせろよ」
「えーだってサボ『美味い』しか言わないじゃん。私はもっと具体的な感想がほしいのに」
「おれは正直に言ってるだけだ」
と言うと、恥ずかしいのか「それは嬉しいんだけど」と照れくさそうに体をもじもじさせる。本で顔を隠してしまうのもいつものことだ。表情を見られたくないのか、はサボの言動にときどきこうして意味のない自衛をする。
だから本を取り上げて、隠すなと言えば最終手段とでもいうように手で顔を覆った。そもそも二人しかいないし、今さら恥ずかしがるようなことでもないだろうに。大体は忘れているわけではないだろう。これからナニをするのか。
「なんで恥ずかしがるんだよ。今からもっとスゲェことするだろ?」
「そっ……それとこれとは別だも、んっ」
顔を覆っていた手を掴んで引きはがし、現れた無防備な唇を塞ぐ。そういえば彼女も風呂上がりらしく、サボの鼻に微かだがシャンプーの匂いが香る。
最初はゆっくりと味わうように重ねては離れる。何度か繰り返したあと、わずかな隙間からするりと舌を滑り込ませた。「ん……っ」の身体が強張る。だいぶ慣れてきた舌を入れるキスも、まだ多少のぎこちなさを残しつつ必死に応えようとする姿はサボを一層興奮させる。
戸惑う舌を搦めとって強く吸う。
唇を噛んだり、舌も噛んだり。甘噛みするのは相手への愛情の証なんて言うが、サボの場合はどうだろうか。ふとそんなことがよぎる。愛情は元よりを独り占めしたいという気持ちの表れのような気もして、だから「見えない部分」だけじゃなく「見える部分」も噛みたい衝動に駆られるのかもしれなかった。
そうしたサボの愛撫に、は切ない声を上げる。何度体を重ねても、普段の彼女とは違う艶めかしいこの声にはいつものことながら身体を熱くさせられる。
可愛くて、今すぐ挿入れたくて――けれど、サボの右手はのそれから離れるとゆっくり背中に回って腰のあたりを撫でつつ、寝間着の中へ侵入する。
やんわり背中を撫でる手を往復させながら、時おり爪を立てて軽く引っ掻いてやると彼女はびくびくと身体を震わせるのだが、口では「それ気持ちよくない」と毎回否定する。否定をするくせに、身体は悦んでいるようにしか見えないからサボは背中への愛撫をやめない。そろそろ弱点だって認めたらいいのに強情だ。
「あっ、また、なんでっ……」
「お前、ほんと背中弱ェなァ。可愛いけど」
「あ、ぁっ……んん」
震えるの足がもぞもぞともどかしそうに動く。こんなよがってるのに、気持ちよくないなんて嘘だ。
その仕草に気を良くしたサボは、背中の手はそのままに唇を耳へ移動させて歯を立てる。唇にしたときと同じように噛んで、舌を差し込む。「やっ……あぁっ!」ひと際大きな声で啼いたかと思うと、我慢していた彼女の腕がいよいよサボに縋りついてきた。
されるがまま声を上げることしかできないの寝間着を少しずつ剥いでいく。今日は前にボタンがついているシンプルなものだ。片方の手で一つずつはずしていき、下着が見える位置まで開いたところで膨らみに一瞬だけ触れる。ついでに背中にあるほうの手でホックをはずし、締めつけがなくなったのをいいことに下から手を入れて柔い胸を揉む。
ふに。あえて表現するならそんな感触がする。の胸はコアラの言う通り前より大きくなった、と思う。別に大きさにこだわりはないが、自分といることで彼女が可愛くなっていく姿というのは当たり前に嬉しいものだ。
そのまま柔らかい感触を楽しむように触れてときどき口づける。が短い悲鳴を上げる。呼吸も短くなり、快感に歪む彼女の表情にサボの熱も高まっていく。
手の動きを止めずに、彼女とソファへ倒れるように沈んだそのときだった。
『サボさーん、就寝前のところすみません! コアラさん達から至急来てほしいとのことです』
雰囲気をぶち壊す仲間の声が扉の外で響いた。
思わずサボの手が止まり、にいたっては肩をびくつかせた。二人して扉の向こうにいる人間に注意を払うように視線が向けられる。
――まさか、ここで? そもそもあいつらまだ部屋に戻ってなかったのか。何してんだ、こんな時間まで。
サボは聞かなかったことにして、もう一度の胸に顔をうめようとしたが、
『総長〜いないんスかー?』確認する声が再び聞こえ、中途半端な位置で固まった。
「……」
『あれ、もしかして本当に寝ちまったのか』
独り言を呟き始めた彼に申し訳なく思ったのか、がサボのシャツを掴んでぎゅっと引っ張り、「えっとサボ、答えたほうがいいんじゃない、かな……さすがに」上気した顔のまま、彼女までそんなことを言った。
「……ああわかってる。わかってるけど!」
身体を起こしてから離れると、「今から行くから少し待ってろ」それだけ伝えてソファから立ち上がり、椅子にかけられたベストだけ奪うように取る。鬱憤を晴らすかのごとくがしがし頭を掻いて扉へ向かう。
「あいつら後で覚えてろよ」
恨み言を吐くように言いながら扉を開けた瞬間、「すみません総長! もう寝てるなんて知らなくて……あ、」サボを呼びにやってきた彼は体を百八十度曲げる勢いで会釈したかと思うと、顔を上げた先に何かを視界に捉えたのか見る見るうちに顔を真っ赤にさせた。
「あ、えっと、すみませんでしたっ!」
「……?」
「まさか、そうとは知らずっ、本当にすいませんっ……」
「だから何が――」
言いかけたところで思い当たる節があり、くるりと体を後ろへ向ける。
そこには同じく顔を赤くしながら、ソファで慌ただしく下着や寝間着の乱れを正すがいた。こちらの会話を気にする余裕はないのか必死に整えている。
とはいえ彼に非があるわけでもないので、胸のあたりにつかえたものを吐き出すようにため息をつく。早く終わらせたい。彼女との時間は仕事の活力なのだ。
「お前は呼びに来ただけだしな、仕方ねェよ。それより早く終わらせてェんだが」
「そ、そうですね! ちゃっちゃと終わらせましょう!」
何に動揺してるのやら、慌てふためく彼が廊下を走っていく。サボもそれに続く――前に、彼女に向かって一言。
「悪いな。少しお預けだ」
2022/8/8
たし恋見てみたいエピvol.2
盛り上がってたのに呼び出される総長と着衣の乱れを正す夢主ちゃんの話