いつ見てもこの光景はサボのに対する独占欲や征服欲を満たしてくれる。見えない箇所はもちろんだが、見える箇所は周りへの牽制にちょうどいい。公然の仲であるとはいっても、一歩外に出れば恋人同士だとわからないので妙な輩に絡まれなくて済む。
そうした諸々の事情や自身の欲求から、サボは容赦なくに痕を付けていく。今宵もまた彼女の白い肌には無数の痕が残り、サボのものであることが証明される。
「……ゃ、あ」
シーツの上で悶えるの首筋に、赤い痕がまたひとつ増えた。きつく吸わないとこんなくっきり残らない。サボは指でそこをなぞってほくそ笑むと、少しずつ場所を変えて同じ行為を繰り返していく。
すでに彼女の柔らかい部分のあちこちに痕をつけているサボが、次に標的にしているのは隠せない場所だった。普段から露出の多くない服装のは、けれど足や腕、首は季節によって当たり前だが晒すことになる。そうしたらどうしたって見えてしまうし、季節感を無視した服装は逆に周りから怪しまれる。まあ何度かそうした服でコアラから揶揄われていたこともあるが。
そういえば髪を束ねている日もあった。庭園で作業するときは邪魔だからと、束ねてまとめ上げている姿を通りがけに見つけて、無防備なうなじにいたずらをした記憶が呼び起こされる。
ふと、サボの中にある考えが浮かんだ。そして一度考えが頭をもたげると離れてくれないので、一旦首筋への行為を中断する。
「。ちょっといいか?」
途切れ途切れに呼吸をするに優しく声をかける。とろんとした瞳がサボを見上げてきて、「なに」とかすれた声で返答がくる。白い肌は徐々に火照ってきて微かに上気していた。
前戯にゆっくり時間をかけられるのも余裕が出てきた証拠だ。幸いにも今日はたっぷり時間がある。存分に可愛がってやれる。
「うつ伏せになってくれ」
「えっ……また、背中……?」
不安気にそう尋ねてくるに、サボは少し笑ってから「違うよ」と囁いて彼女の身体を支えつつ、手伝ってやる。
背中が弱いことは既知の事実だが、そこにはもうくまなく口づけ、食んだ痕が残っていた。指も舌も、使えるものはすべて使って慈しんだ証拠が。だから次はもっとわかりやすいところだ。
反転したの身体を覆うようにかぶさって、乱れた彼女の髪をさらりと横に避ける。正面で見るのとはまた違った煽情的な光景に欲を掻き立てられるのはたやすい。サボは晒された――少し汗の滲んだ白いうなじへ唇を寄せた。
「んっ……」
最初はそっと添えるだけの軽いキスを落とす。くすぐったそうに身を震わせているの表情はわからなかったが、そんなものは声を聞けばあらかた想像がつく。サボは動作を緩めることなく、段々と吸いつく強度を上げてわざと音を立てながら彼女のうなじに何度も口づけた。
「や、そこっ……見え、ちゃう……っ」
「そんなに嫌なのか?」
「嫌っていうか、恥ずかしい、から……」
枕に顔をうずめて身悶えるが不意に振り向いて訴えてくる。恥ずかしいから、見える位置はやめてほしいらしい。言われて、そうだろうなとは思う。コアラを含め部下達に指摘されたことがあるのだろう、自分がいないところでどんな会話をしているのかは知らないが、狼狽える彼女の姿が容易に想像できた。
しかし、恥ずかしい気持ちを打ち明けられたからといって易々と引き下がるわけにはいかない。痕を付ける意味は見えない相手へ牽制することであるのはもちろん、への愛情もあれば独占したいという私欲も込められている。
「そうか」
一言短く答えてから、サボはうつ伏せのまま呆けているをゆっくり起こして膝の上で抱きかかえた。突然至近距離で向き合う姿勢にさせられた彼女は「えっ、あ、なに」あたふたしながらサボの腕にしがみつく。意味がわからないのか、「サボ?」と説明を求める仕草をした。
「これならどうだ」自身の首を指して示してやる。それでもはやっぱり戸惑っていて、どういうことだって顔をするので、
「おれにも付けていいって意味だよ。やってみたいだろ?」
はっきり言葉にして伝える。
彼女が納得するかはともかく、お互い見える箇所に痕を付ければ羞恥心は半分にならないだろうか。サボにしてはまったく論理的でない思考回路だと思ったが、ふやけつつある頭では論理的な考えなどできるはずがないし、そもそもする必要もない――と、考えていたサボの意に反してが目を輝かせていたので少し驚く。
「いいの……?」
「いいよ。が付けてくれんなら」
「や、やってみたい」
「なんだよ、積極的じゃねェか」
ワクワクと好奇心を膨らませて楽しそうな表情をするの唇を舐めて口づけた。きちんと痕を付けるには空気が漏れないようにある程度潤っている必要がある。
舌を侵入させて歯列を舐める。優しくなぞって、舌の裏も撫でていく。唾液が溢れて時おり音が出る。下唇を甘く食んだり、舌先を吸ったり、悪戯をするみたいに彼女の口内を弄ぶ。
たっぷり楽しんでようやく口を離した頃、熱っぽい目を向けると視線が交わる。まだこれからだっていうのに相変わらず可愛い奴。
「よし、じゃあ付けていいぞ」
その言葉に頷いたが、ぎこちなくサボの胸板に手を添えて首筋に近づいてくる。そういえばいつも痕を付けるのはサボばかりで、彼女は一度もやったことがないということに気づく。やり方というやり方はないが、付けるコツはある。
ふに、という柔らかな感触がサボの首をかすめたかと思うと小さな音とともに吸われる感覚が走った。躊躇うどころか思いきり吸いついてきた。一度離れて、また同じ場所を吸う。
「ん……」
思わずサボの口から漏れる吐息も切なくなる。健気に吸いつく姿がいじらしくて、こんなことならもっと早く強請ってもよかった。
そうしてしばらく同じ行為を繰り返したあと、ゆっくり顔が離れていった。サボ自身見ることが叶わないのでわからないが、の表情から察するにどうやらうまくいったらしい。彼女の指が痕をなぞって一言。
「おそろいだね、嬉しい」
「……」
いや、お前――そんなこと言うなよ。男は単純だし、すぐ調子に乗るんだぞ。少なくともおれは今お前の言葉で完全に欲が膨れ上がった。
「恐ろしいなお前……まァ今夜は時間もあるし、ゆっくり楽しもう」
「ぁっ……」
「覚悟はできてるよな。もう止められねェぞ」
の首に噛みついて、勢いそのまま再びシーツに縫いつける。もっと彼女を感じたい衝動が飢えた獣のようにサボを駆り立てていく。
2022/09/11
たし恋見てみたいエピvol.11
互いに痕を付ける話