もう待てないよ

 との休暇が決まったときから落ち着かなかった。もう幾度となく夢見た彼女との夜は、つい先日実際夢の中で実現してしまったが(しばらく罪悪感が拭えなかった)、今度こそ本当に叶うかもしれないと柄にもなく心がざわつく。なぜだか自分と同じように落ち着かない部下達を適当には納得いかないものがあるものの、目くじらを立てて怒るまでもないので放っておいた。大体なんでお前らに心配されなきゃいけねェんだ。
 そうして仕事に追われるうちに、の第二の故郷であるセント・ヴィーナス島へ到着する日を迎えた。滞在期間はごくわずかだが、彼女にとって久々に故郷の土を踏むのは嬉しいようで子どもみたいにはしゃいでいる姿は可愛かった。
 昼間はカフェの常連客だという男と仲良くする光景を見せつけられて、内心とても面白くなく不貞腐れた態度を取ってしまったものの、一晩中と居られるのは自分だし、が好きなのは自分であって彼ではないと思うことでなんとか留飲を下げた。
 しかし、いざその時を迎えるとなると緊張で心臓が飛び出してくるのではないかと思うほどサボは動揺した。もしかしたらという淡い期待をもって二人きりでここに来たのは確かだが、が初めてなことは事前に知っていたし、きっと行為に対する恐怖もある。無理やりするのはサボの意に反する。初めてだからこそ、慎重にいくべきだ。
 夜更けが近づくにつれてサボの頭の中はとのことでいっぱいになっていく。仮にそういう雰囲気にならなかったとしても、一緒に寝ること自体が初めてだからそれはそれで緊張する。逆にサボの望んだ未来になったとして怖がらせることだけはしたくないと、シャワーを浴びているに思いを馳せて待っていること一時間。どんな展開になってもを前に理性を崩さないでいようと誓ったサボの心を、しかし彼女はあっけなく砕いた。

「お待たせ。遅くなってごめんね」
「……」

 シャワー室から出てきたの格好は、サボの知る彼女の服装からかけ離れた心もとないものだった。パステルブルーのキャミソールとショートパンツは彼女の四肢の美しさをこれでもかと主張するようにサボの視界に入り込んでくる。遠のきかけた意識を瞬時に引き戻して、平常心を保とうと一度目を閉じた。
 深く息を吸って吐いてから、
「そんな待ってねェよ。次、おれ行ってくる」かろうじて答えてソファを立った。

 すれ違いざま、のほうは一度たりとも見れなかった。
 だってお前、そんな格好――まるでおれと同じ気持ちだって言ってるみたいじゃねェか。ってことは、いいんだな?
 。おれはお前が欲しい。

2022/09/17
たし恋見てみたいエピvol.13
あの日あの時のサボくんの心情