「起きてサボ、もう朝だよ」
同じベッドで寝ていたはずのの声がなぜか頭上で聞こえて、サボは意識が少しずつ浮上してくるのを理解した。けれど、なんとなく目を開けたくなくて「……」無言を貫き寝ぼけたふりしてやり過ごす。
朝だよ――そんなふうに彼女が起こしてくれる日々が始まってもうすぐ一か月が経とうというところだった。
すべてのやるべきことを終えたサボは、革命軍本部から離れて彼女とともにセント・ヴィーナス島へ移り住むことに決めた。この場所を選んだ理由はもちろん彼女の店がこの島にあるからだ。店はどこでも開けるからとは言われたものの、彼女が作る料理を楽しみにしている人間がいることを知っていたサボはそんな無下なことをできるわけもなく、港町ベルツェの丘の上に家を建てた。
の嬉しそうな顔を見たら、サボの小さな嫉妬など胸の奥にしまったままでいいとさえ思う。彼女の大事なものはサボも大事にしたいという気持ちは変わらない。ここで築いた彼女の人間関係を、サボの身勝手な理由で崩すわけにはいかなかった。
鼓膜をくすぐる聞き心地の良い声を堪能するように、サボは現実と夢の狭間を行き来する。起きようと思えば起きることができるのだが、かいがいしく起こしに来てくれるの可愛さにサボはいつも寝ているふりをして見守っていた。
声をかけても起きない自分に、肩を揺すったり布団をはいだり懸命に起こそうとする姿を薄目に見ながら楽しんでいたが、なぜか今日は違う行動に出た。彼女の息遣いが近くで聞こえる。
「起きないと、キスしちゃうかも」
耳元での声が聞こえた刹那、サボは無意識に彼女の腕を捕まえてそのままベッドに引きずり込んだ。「きゃっ……」その拍子に彼女が悲鳴を上げたが、構わずにその華奢な身体と自分の身体を入れ替えるように逆転させる。
いとも簡単にシーツに縫いつけられたはただただ驚いているばかりで目を丸くさせていた。
「忘れたのか。そういう可愛い言葉は逆におれを煽るだけだってこと」
「なんっ……起きてっ……」
じたばたするの両手を頭上でひとまとめにして抵抗させないようにする。
じっくり見下ろして思う。今日も彼女がかわいい。朝だというのにめちゃくちゃに抱きたい。
「おれはいつだってお前に触れたいし、そういうこと考えてるって言ってるだろ」
「……っ、サボのえっち」
「男なんてみんなそんなもんだ。今までだったら誰かが訪ねてくる心配をするところだが、あいにく咎める奴はもういねェ。ってことは……わかるよな?」
「なにしてっ……」
空いているほうの手を彼女の服の隙間に滑らせる。朝飯の支度中だったのだろう、今日の格好は余計にサボを興奮させる材料になってしまった。全体的にフリルが多めにあしらわれたピンクのそれは初めて見るデザインで興味をそそられる。
「随分と可愛いエプロンつけてるな。脱がしちまうのもったいねェからこのまま――」
「あっ、やだっ……ん」
エプロンはそのままに、服と下着だけ首元まで一気にめくりあげる。露わになった胸の先端がエプロンの布地に擦れた瞬間、の口元から甘い声がもれる。
手も足も動かせない状態で、でも屈しないように唇を噛んで必死に堪えようとしていた。
「可愛いな、朝メシの前にお前を食いたい」
「んっ……」
「ここ、もう固くなってる」と、エプロン越しに主張している尖った部分を摘まむ。胸元のハート(完全なハートではないがそれに近い)型がまた男を煽るデザインだと思う。まあこんな使い方はしないだろうが。
生地を押し上げているそこを布越しで執拗に責め立てていくと、の身体が小さく震えていって――
「だ、だめぇっ……! 朝はえっちしません! 今日はお店があるって言ったでしょ!!」
いつもなら流されてくれるはずのは、しかし緩んでいた拘束を抜け出してサボを押しのけた。そうして荒い呼吸を繰り返しながら乱れた衣服を整えていく。完全に不意打ちを食らったサボは、彼女をただ見つめるばかりで何も返せなかった。
数分と経たないうちに気づけば元通りの姿になり、そそくさと寝室から出て行こうとする彼女が一度振り返って、「早く着替えて出てきてね。それと……え、えっちは帰ってきてからにしてっ……」赤面しながら言い捨て、今度こそ部屋を後にした。
だからそういうところなのには全然わかってなくて、このあとサボは自身の昂る熱を治めるのに苦労する羽目になる。
2022/12/16
たし恋見てみたいエピvol.27
結婚後の二人