大好きなきみへ

サボへ

 改めて手紙を書くのは緊張するな。だって書くのはあのとき以来だから。
 サボと出会ったのは四歳のとき、アウトルック家が客人として来るって聞いてて婚約者の人も一緒だっていうからとっても憂鬱だった。だから時間になるまで外にいた。せめて気を紛らわそうと、あのトネリコの木に。そうしたら突然話しかけられてびっくりしちゃった。誰も来ないだろうって思ってたから。
 それがサボ、あなただった。
 名前だけでどこの子かはわからなかったけど、私たちにはそんなの関係なかったよね。「海」の話をしてくれたの今でも覚えてるよ。私にはまるで考えられなかった外の世界を教えてくれたサボは、私にとって希望で、光で、目指す場所になった。サボと同じ景色が見たい、一緒に海へ出たい、結婚すればいいって言ってくれたのも嬉しかった。そのあとサボが婚約者だって聞いたときはさらに驚いたけど。

 そこから数回手紙のやり取りとたまに遊んだりして、私はサボのことがもっと好きになったよ。この人と一緒にいれば、自分も何かできるって思った。やりたいことも夢もあの頃はまだなかったけど、サボと一緒に海へ出たらきっと見つかるって、そう思ってた。
 だから、突然手紙の返事が途絶えて、家出したって聞いたときはすごいショックだった。言い方は悪いけど、私は裏切られたんだって思ったの。ごめんね。サボの家の事情も知らずに、勝手にそう考えてた。

 あれから五年経って、例の火事と天竜人が来るって話を聞いたあと、音信不通のサボからまた手紙が届いてすごく舞い上がった。私のことを忘れたわけじゃなかったんだって。先に海へ出るって書いてあったけど、いつか私がサボを追いかけて海へ出たら、そして奇跡的に出会えたら今度こそ結婚しようっていう言葉も嬉しかった。
 だから、会えなかった五年間の話を聞くために、手紙に書いてあったコルボ山の兄弟のところへ行ったよ。私にしてはかなり危険な旅で、何時間もかけてようやくたどり着いたのに、エースから「サボは死んだ」って聞かされて、訳が分からなくて、信じられなくて……しばらくは泣いてばかりだった。エースとルフィには泣き虫って思われたかもしれない。もちろんずっと泣いてたわけじゃなくて、二人のおかげで立ち直れたんだけどね。サボに恥じない人生を生きようって思った。

 それで、私もカートレット家を出てエースたちと過ごしてたんだけど、エースが十七、私が十九で海へ出て、ルフィもその一年後に海へ出た。二人は海賊になって、私は憧れのセント・ヴィーナス島へ行って――カフェを始めた。三年かけて順調に経営ができるようになった私のカフェには常連客もできた。サボのことを思い出して泣くこともあったけど、楽しい毎日を送ってたよ。
 そのあとはサボが知ってる通り、カートレット家の人に見つかって連れ出されたけど、ドラゴンさんに運よく助けてもらったんだ。そうしたら、まさかサボの上司だったなんて……革命軍のことは噂で聞いてたけど、そこにサボが所属してるなんて思わなかった。

 サボ。
 私と出会ってくれてありがとう。こんなに好きになれる人は世界のどこを探してもサボだけだよ。生きてるって知ったときは夢じゃないかと思ったけど、毎朝起きるたびにサボが隣にいるのを見て実感する。夢じゃないんだって。私、サボと生きていけるんだって。すごく嬉しい。私のことを好きになってくれてありがとう。大好きです。これからもずっと、よろしくね。

より


2023/05/23
ラブレターの日