バニーガールの姿になっているフレイヤが少し覚束ない足取りで近寄ってくる。片手にワイングラスを持ち、ピンヒールという踏まれたら確実に怪我をしそうな高いヒールを履いてゆっくりと――
何をしているのかというと、今回の潜入先である大型カジノで接客することになった彼女が慣れない恰好のため、時間が来るまで練習したいという彼女たっての希望により、バックヤードの一室を借りて接客練習を行っていた。サボは客として彼女の練習に付き合っているのである。
ソファに背中を預けながら、たどたどしい歩き方をするフレイヤを見守る。
網タイツに胸の谷間を強調した黒のバニースーツ。肌の露出が多すぎて目のやり場に困るこんな服を考えた奴は一体どこの変態野郎なのか。任務じゃなければ、彼女のこんな恰好は絶対に承諾していない。任務だと理解していても渋るところだというのに。
不服ながらもサボは、任務を全うしたいというフレイヤの懸命な気持ちを汲んで仕方なく練習にも付き合うことにした。ほかの奴に任せられるわけがない。
こうしてソファまであと数メートルというところで、しかし事故は起きた。
フレイヤの左足がバランスを崩し、その衝撃で手にしていたグラスからワインがこぼれ、グラスも彼女の手から離れて床に落ちた。と、同時に彼女の身体がガクッと崩れ落ちていき、こちらが支える間もなく床に膝をついてしまった。
「フレイヤっ……大丈夫――」言いかけた言葉は最後まで紡ぐことなく切れた。
サボの視線はフレイヤの胸元に注がれる。赤紫色の液体が彼女の鎖骨から胸の谷間へ吸い込まれるように流れていくのが見えて、ひゅっと息をのんだ。
なんと卑猥な光景だろう。白い肌にワインの色は刺激が強すぎる。床にも飛び散ったせいで、横に倒れたグラスの周りには赤黒い液体が高そうな絨毯に染みを作っていた。そうした細かな部分まで彼女の姿を厭らしく映しす演出に見えてしまう。
そのとき、サボの脳内にはいつもの悪い考えが生じていた。自分達が接客に応じるまでまだ時間がある。ワインで汚れてしまった彼女をどうにかしなければならない。
おもむろにサボは上半身を起こして、すぐ目の前にいるフレイヤの顎を掴むと少し強引にこちらを向かせた。床に膝をつく彼女と、ソファに座る自分とでは当然目線の高さが違うが、奇しくも股の間でひざまずく彼女の姿に形容しがたい征服感が生まれる。
失態を犯してしゅんとする彼女にサボは意地悪だと知りながら言う。
「汚しちまったなァ」
「……も、申し訳ありませんっ……」
「……」
なぜか丁寧な言葉遣いで謝られて首を傾げたが、そういえば接客練習の最中だったと思い出して、自分が"客"であることをいいことに「おれが綺麗にしてやる」とフレイヤの身体を抱え上げた。
「きゃあ」
可愛らしい悲鳴を耳元で聞きながら、構うことなくフレイヤを正面から抱き、膝の上に乗せる。そうすると顔を少し下に向けるだけで彼女の胸に触れられる。準備万端だ。
サボは困惑している彼女に向かって苦言を呈した。
「客のワインを零すなんて怒鳴られる可能性もあるぞ。それに、もっと悪い奴ならこうやってお前を抱き込んでヤラしいことをするかもしれない」
「あっ、なにして――んッ」
大胆にも露わになっているフレイヤの胸の谷間に舌を這わして、汚れてしまった箇所を舐め上げた。
直後、赤ワインの渋味と芳醇な香りが口の中に広がる。大型カジノなだけあって、なかなか良質なワインのようだ。
「もったいねェだろ?」といかにもな理由をつけて、飛び散った液体を舌ですくい上げるように悪戯をする。時折、きつく吸って音を立てると彼女の身体がぴくんと反応するので可愛い。痕をつけるわけにはいかないので加減はするが、相手をそういう気分にさせるこの恰好じゃどうにも理性を保つのは大変そうだ。
「やめてサボっ……」
身を捩って離れようとするフレイヤの腰を抱き、触り心地の良い膨らみに顎を乗せれば相手を翻弄している高揚感がこみ上げてくる。
彼女の表情もまた出来上がりつつあった。自身の失態や今の状況を恥じて頬を染め、けれど肌を刺激されるたびに可愛らしい声で啼いてしまう。素直な彼女が、サボにはたまらなく可愛く映るのだ。
「そんな顔されてやめると思うか?」
「でもっ……練習しないと、」
「だからおれを客だと思えばいい。おもてなししてくれよ、可愛いウサギさん」
まあこんなお触りを良しとする接客を、実際フレイヤにさせることはシフトマネージャーとして絶対に許さないが。
今は自分が"客"なので、一足先に新入りにして一番可愛いウサギを堪能させてもらおう。
2024/08/03
カジノ任務番外編