瞼に映る懐かしい記憶

 革命軍の朝はいつも慌ただしい。誰かがあちこち駆け回り、情報が飛び交い、遠くにいる仲間と連絡を取り合って、バルティゴから出ていく者も大勢いる。それぞれがそれぞれの仕事を全うし、同じ志を持つ者として毎日懸命に任務に励むのだ。
 かくいう彼女も、父親がドラゴンと旧友であることから幼い頃よりずっと革命軍で過ごしている。とある事件で唯一の肉親だった父を失くした彼女は、彼の意志を継いで十九歳になった今も革命軍に籍を置いていた。さらに言えば、彼女は早くに母親を失くしたせいで幼い頃は感情が乏しかったのだが、その殻を破って彼女の心に飛び込んできた人間がいる。

「これ、コアラたちに届けてくれ」
「了解です」
「終わったらそのまま資料室に向かっていいから」
「わかりました」

 上司の指令を受けた彼女は一礼すると手渡された書類を小脇に抱えて執務室を後にした。
 彼女の上司であるサボは革命軍において"参謀総長"という肩書きを持つ、実力で言えば総司令官・ドラゴンの右腕にあたる。弱冠二十二歳でありながら、その強さと頭脳はどの幹部にも引けを取らない。特殊な生い立ちの過去を持っているが、ほとんどのメンバーが似たような境遇であるので馴染むのも早かった。何より彼女の凍った心を溶かした人物こそ、革命軍に来てから数か月ばかりの十歳のサボだったのである。
 年の差が離れていない二人は彼女の父を通して一緒にいることが増え、とあるきっかけからすぐに仲良くなっていった。同じ任務をいくつもこなし、気づけばサボは彼女の上司としてそこに君臨していた。サボくん、と呼んでいたあの頃と違い今は立場をわきまえて「総長」と呼ぶが、時折あの頃が恋しくなってつい呼んでしまいたくなる瞬間がある。父の後を継いで今の立場にいるサボを彼女は誇りに思っているので、もちろん自制心が勝るのだが。




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