全部抱きしめて、キス

 管制通信室。各方面へ散らばる仲間と密に連絡を取り、情報を交換し共有する部隊。毎日ひっきりなしに電伝虫が鳴っていて、誰かしらが遠くの仲間と通信している。入ってきた情報をもとに、幹部が指示を出したり実際に現場へ赴いたりする。
 そして彼女もまた管制通信室の人間であり、仕事に勤しむ革命軍の一人だ。はじめこそ人員不足の穴を埋めるサポート役として管制室に所属されたのだが、これが適任だったのか意外にもすんなり通信室に溶け込み瞬く間に頭角を現していった。今では「管制通信室の紅一点」などと呼ばれ親しまれている、らしい。
 というのも、サボがこの話を聞いたのは人づて――コアラを通してつい最近知ったばかりなのだ。実際彼女が働く姿をサボは見たことがないし、正直仕事で誰と懇意にしているとかそういったことは別に興味なかった。彼女のあんな姿を見るまでは――
 そもそも彼女が革命軍に来たのは偶然のことであって、当初は仕事させる気などなかった。彼女が世話になるならせめて何か貢献したいという厚意を、コアラが手を必要とする場所を探して見つけたポジションだった。最初は午前中だけとの約束が、慣れてくると次第に一日になり、今では夜中の番も任されるまでに至っている。昔から愛嬌があるのは知っていたから、持ち前の明るさとこれまでカフェの店主として接客してきた能力を活かして今ここにいない仲間ともうまく話しができるのだ。
 昔から、とサボが言うのにはもちろん理由がある。彼女とはここで初めて出会ったわけではない。サボが四歳のときに将来を誓った婚約者だ。訳あって約十七年もの間離れていたところを、しかしつい最近奇跡的に再会したのである。
 そしてその婚約は今も継続されている。再会して彼女と恋人関係になったサボは、任務の合間を縫って十七年の時を埋めるように少しずつお互いのこれまでを話す時間を設けていた。四歳の彼女の記憶しかなかったサボにとって、大人になった彼女はまるで知らない人を見ているようで最初は戸惑ったものの、話せば話すほど彼女の面影を感じて愛おしい気持ちが増していく。
 あの頃はまだ"好き"という感情に名前を付けることができず、一緒にいることが幸せで、結婚はその延長にあるものだと思っていた。
 けれど今ならはっきりとわかる。サボは彼女をひとりの女性として好きだし、それがいわゆる愛であることは明白だ。再会してエースたちと出会う前の記憶が一気に押し寄せてきたことで、想いの深さをより一層感じていた。
 だからといって、彼女が革命軍の誰と仲良くなっていようとサボが干渉する必要のないことだった。彼女は彼女なりに、ここでの生活を円滑に進めるために自ら仕事を願い出て役に立とうとしている。それをサボの個人的な理由で妨げるなどもってのほかだ。




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