ホワイトデー進捗模様


※『たしかに恋をしていた』の番外編
** vol.1 **


「なァ。バレンタインにはお礼する儀式があるって聞いたんだが、フレイヤに何を返したらいいと思う」
「なんすか儀式って」
「イワンコフがホワイトデーっつーのがあって、バレンタインの礼としてお返しする習わしがあるらしいぞ」
「なるほど。でも別にフレイヤさんは見返りがほしくて作ったわけじゃないと思いますけどね」
「そんなことわかってる。ただおれがしてやりてェんだ」
「……」
「なんだその顔」
「いや、総長って本当にフレイヤさんの溺愛っぷりがすごいというか」
「むしろ足りねェだろ。あいつがくれるモンに対して」
「確かに素敵な女性だと思います。ん〜正直フレイヤさんは総長がくれるものは何でも喜ぶというか……だったら、入浴剤がいいんじゃないですか? 一緒に入ることありますよね」
「入浴剤か」
「最近、結構凝ったものが売られてるって周りの女性陣が言ってました。フレイヤさんってガーデニング好きじゃないですか、花の香りとか喜ぶと思いますよ」
「そうか、花の香り……参考になった。ありがとな」


** vol.2 **


「あーなんでこんなたくさんあるんだ。どれがいいのかわからねェ」
 サボの嘆きは広い店内の喧騒にかき消された。思わず渋面になる自分の隣で楽しそうに物色している部下に「おいコアラ」と声をかけた。
「どれならフレイヤが喜ぶのかまったく見当がつかなくて困ってる」
「私も今度フレイヤと一緒にお風呂入りたいな〜バラ風呂はサボ君に譲ってあげるけど……あ、王女のフラワーバスだって。名前が可愛い!」
「話を聞いてくれ」
「だからさっきから言ってるじゃない。フレイヤなら何でも喜んでくれるって」
「お前なァ……ホワイトデーにフレイヤへ渡すモンを一緒に選んでくれるっていうから連れてきてやったのに、自分だけ楽しむな」
「任務終わりのついでで寄っただけでしょ! 連れてきてやったとか言わないで」
「……悪かった。で、どういうのがいいんだよ」
「ん〜さっきも言った通り、バラ風呂がいいんじゃない? ほら、これとかギフト用って書いてあるし、香りも高級だって」
 コアラが指差したのは、大きめの箱に目一杯詰め込まれた色とりどりのバラの花。赤、ピンク、白、ベージュ、黄。鮮やかな色合いだった。
「これをどう使うんだ」
「お風呂に浮かべるの。そうすると花が開いて香りが漂うんだよ。昔からバラは美容効果があるって言われてるし、心身ともにリラックスできる。花が好きなフレイヤなら気に入ってくれると思うよ」
「風呂に入れるのか。へェ……面白そうだな」
「まさかやらしいこと考えてないでしょうね」
「違ェよっ……このバラが浮かんだ風呂ん中に、あいつがいるのをちょっと想像しただけだ。とりあえず買ってくる」