ゆるやかに落ちていく(4)
以前、翼の好きなタイプをさりげなく聴いたことがある。まあいつもの通り軽くあしらわれたのだが、どうやら玲ちゃんみたいな年上の女性が好みらしいというのはわかった。この時点では対象外である。どう頑張ってもは翼の年上になれない、生まれ変わらない限り。
だからといって諦めないのがという人間であり、正直彼は呆れた顔をしながら満更でもない様子であることが最近わかるようになった。
「翼〜私は本気で好きなんだよ〜」
「間延びした語尾で、しかもそんな机に突っ伏した状態で告白されても全然真剣さが伝わらないんだけど」
テストから解放されて羽を伸ばしているある日の昼休み。校庭が利用できないので教室にいる翼たちが駄弁っていた。よくもまあ飽きもせずサッカーの話ができるなと呆れつつ、夢中になれるものがあるということに感心もしている。には情熱をかける対象が今のところない。サッカーは好きだが、なくても生きていけるし、彼らのプレーする姿が好きなだけであって自分がやりたいわけではない。
と、夏の暑さに負けて机の上で休みながら翼たちの話が一旦止んだところを狙って四度目の告白をしてみたのだが。頬杖をついて首をこちらに向けた彼の瞳は、単細胞を見るような目をしていた。さては馬鹿にしているな。
「この前から翼はなんなの? はっきり伝えてるのにどうして流すわけ」
「そっちこそ他人がいる前でよく言うよ。お前の俺に対する気持ちってそんな軽いのか?」
「ぐっ……言い返せない」
「ほら見ろ。俺に喧嘩を売って勝とうなんて百年早いね」
「喧嘩を売ってるつもりはないんだけどな……なんでかな」
「飽きないよな、お前」
ため息に近い息を吐いて悲劇のヒロインぶっても慰めてくれないのが翼の友人たちで、特にマサキは辛辣である(仮にもより一個下なのに!)。先輩にお前とは、別に上下関係にうるさく言うつもりはないがもう少し優しい言葉をかけてくれてもいいのではないかと思う。それに堂々と一学年上の教室に入ってくるあたり肝が据わっていて大したものだ。
「じゃあどうすればいいのよ」
「いや知らねえけど……告白っつーのはもっと雰囲気とか大事なんじゃねえの」
マサキの適当に聞こえる発言は、しかしの心にしっかり響いていた。「雰囲気、ねえ」むくりと上半身を起こして考える。ひとり、話の輪を抜けてきた彼はどちらかというと冷静に物事を俯瞰する質なので、実はこっそり信頼しているのだが、何せ年下なのであまりそういうふうを装うと先輩の威厳がなくなりそうという理由で明言していない。
翼が談笑している中、は想像する。翼をひと気のない場所に呼び出して、二人きりで告白するところを。放課後の体育館裏。オレンジ色に染まる校舎に隠れて、翼に好きと――そこまで考えての思考はシャットダウンする。
「なにこれ、かゆっ! え、無理くない!?」
急に立ち上がったを、翼たちが怪訝そうな目で見ていたがそんなことを気にする余裕はなかった。