告白後の男同士の会話
「で? 何があったんだよ」
前にもこんなふうに問い詰められたことがあったなと思いながら、エースは数時間前の白石とのやり取りを頭の中で振り返った。思いだしただけでも恥ずかしいのに、それを親友に打ち明けるなど恥ずかしいの極みだろう。
部活を終えた午後の七時半。ファミレスで勉強しているというサボと待ち合わせして、四人掛けのソファ席を陣取っているサボの向かいに腰かけた直後のことだ。スポーツバッグをソファに下ろして間もなく、サボがニヤニヤしながら聞いてきた。別に悪いことをしたわけでもないのに、なんとなくばつが悪くてサボの顔が見られないまま、
「別に」ぼそっと一言。
「別にって顔じゃねェよな」
「ンなことどうだっていいだろ」
「白石さんだろ。わかりやすいなエース」
楽しそうにペンをくるくる回しながらサボが的確に言い当ててくる。くそ、ニヤニヤしてるのがムカつく。けれど、かわし方がわからなかったエースは「だったらなんだ」と開き直るしかできなかった。その答え方にぽかんとしたサボは、しかしすぐに腹を抱えて笑い出したので面食らう。
「お前がちゃんとあの子に向き合ってるみたいで嬉しいよ。ようやく告白したのか」
「……」
「マジ……? ちょっとカマかけたつもりだったんだが」
「サボてめェ、そりゃずりーだろ」
「なんだよズルいって。おれはずっと心配してたんだ」
サボが呆れ顔で言うので、浮かしかけた腰を下ろして背もたれに寄りかかる。
確かにサボには彼女のことでいろいろ世話になった――というより迷惑をかけたと言ったほうが正しいかもしれない。主にエースが勘違いをしたせいで彼女とは拗れるし、予定のなかった告白までさせる羽目になったのだから。まあ今にしてみれば、結果はそれでよかったのかもしれないが。
「まァお前が白石さんを気にかける気持ちはわかるよ。あの子、放っておけないタイプだよな」
「サボ」
「怖ェ顔するなって、そういう意味じゃない」
怖い顔をした覚えはないが、じゃあどういう意味だと問いたくなる言葉だ。サボは変わらず飄々としていて表情が読めない。一番近くにいる存在だが、わからないと思うこともある。相手のすべてを知らなくてもサボとの関係は変わらないし、これからも知る必要のないことは無理に聞かなくてもいい。話してくれるなら聞くが。
「エース」と、改まって呼ばれ、反射的に姿勢を正して「なんだ」と答える。
「きちんと守ってやれよ。お人好しは騙されやすいし危ねェ奴にも引っかかる」
「わーってるよ」
白石に関する話はそれで終了し、妙な緊張感から解放されたからか、急に空腹を感じたエースはテーブルの隅にあったタッチパネルでボリュームのある肉料理を適当にタップして注文した。